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小規模事業者持続化補助金 飲食店の申請ガイド【記載例付き】

小規模事業者持続化補助金 飲食店の申請ガイド【記載例付き】

はじめに|飲食店が最初に挑戦すべき補助金はこれだ

補助金の世界に初めて踏み込む飲食店経営者に、筆者が真っ先に勧めるのが小規模事業者持続化補助金だ。

理由は3つある。

一つ目は対象の広さだ。ホームページ制作・チラシ作成・看板設置・新メニュー開発・店舗改装など、飲食店が実際に取り組む販路開拓の施策がほぼカバーされている。

二つ目は採択率の高さだ。他の大型補助金と比べて採択率が高く、初めて補助金に挑戦する事業者でも採択されやすい。

三つ目は商工会議所・商工会のサポートが使えることだ。申請書の作成を専門家に無料でサポートしてもらえる仕組みがあり、一人で書類を作る負担が軽減される。

このページでは、小規模事業者持続化補助金の概要から申請書の書き方・記載例まで、飲食店が実際に申請できるレベルで解説する。


小規模事業者持続化補助金とは

小規模事業者持続化補助金は、小規模事業者が販路開拓や業務効率化に取り組む際に、その費用の一部を補助する国の制度だ。中小企業庁が所管し、全国の商工会議所・商工会が窓口になっている。

制度の目的 小規模事業者が自社の経営を持続・発展させるための取り組みを支援することが目的だ。単なる設備投資ではなく「売上・顧客を増やすための取り組み」に使える点が特徴だ。

歴史と実績 2014年度から実施されており、累計で数十万件以上の採択実績がある。飲食業での採択事例も多く、先行事例が豊富に存在する。


対象者の要件

小規模事業者の定義(飲食業の場合)

飲食業はサービス業に分類される。サービス業の小規模事業者の定義は常時使用する従業員数が5名以下だ。

パートタイム労働者については、週所定労働時間が通常の労働者の4分の3以上の場合に「常時使用する従業員」としてカウントされる。短時間パートが多い飲食店では、実質的に5名を超えていても要件を満たすケースがある。詳細は商工会議所に確認する。

個人事業主も対象 法人だけでなく、個人事業主も申請できる。開業届を出していれば申請資格がある。

申請できない事業者

  • 過去に同補助金で不正受給をした事業者
  • 反社会的勢力に関係する事業者
  • 補助金申請時点で廃業している事業者

補助額と補助率

通常枠

項目 内容
補助上限額 50万円
補助率 補助対象経費の2/3
自己負担 補助対象経費の1/3

例:ホームページ制作に60万円かかる場合 → 補助金:40万円(上限50万円だが補助率2/3で40万円) → 自己負担:20万円

特別枠(加点・上限額アップ)

通常枠に加えて、以下の枠では補助上限額が引き上げられる。

枠の名称 補助上限額 主な要件
賃金引上げ枠 200万円 事業場内最低賃金の引上げ
卒業枠 200万円 補助事業終了後に小規模事業者の定義を超える規模拡大
後継者支援枠 200万円 事業承継・後継者による新たな取り組み
創業枠 200万円 産業競争力強化法に基づく特定創業支援等事業を受けた創業者
インボイス枠 100万円 免税事業者からインボイス発行事業者への転換

自店がどの枠に該当するかを確認し、条件を満たすなら特別枠での申請を検討する。


補助対象になる経費

どんな費用でも補助されるわけではない。対象になる経費と対象外の経費を正確に理解することが重要だ。

対象になる主な経費

① 機械装置等費 業務に必要な機械・装置・工具の購入費。飲食店では調理機器・食器・POSレジ等が該当しうる。

② 広報費 チラシ・パンフレット・メニュー表の作成費、広告掲載費、SNS広告費、看板製作費等。飲食店が最もよく使う経費区分だ。

③ ウェブサイト関連費 ホームページの新規制作・リニューアル費用。ただし、ウェブサイト関連費のみの申請は認められず、他の経費区分と合わせての申請が必要だ。また、ウェブサイト関連費の補助上限は補助金全体の1/4以内という制限がある。

④ 展示会等出展費 食の展示会・商談会への出展費用。新たな販路開拓を目的とした出展が対象。

⑤ 開発費 新商品・新サービスの開発費。新メニューの試作費・開発に伴う材料費等が対象になりうる。

⑥ 資料購入費 補助事業に関連する図書・資料の購入費。

⑦ 雑役務費 補助事業のために臨時的に雇用したスタッフの人件費。

⑧ 借料 展示会等で使用する機材・設備のレンタル費用。

⑨ 設備処分費 補助事業実施のために既存設備を処分する際の費用。補助金全体の1/2以内が上限。

⑩ 委託・外注費 自社では実施困難な業務を外部に委託する費用。ホームページ制作の外注等が該当。

対象外の主な経費

  • 人件費(従業員への給与・アルバイト代)
  • 食材・消耗品の購入費(通常の事業運営に必要なもの)
  • 汎用性の高い物品(スマートフォン・パソコン単体等)
  • 店舗の家賃・光熱費
  • 借入金の返済
  • 税金

申請書類の構成

小規模事業者持続化補助金の申請書類は主に以下で構成される。

① 様式1:小規模事業者持続化補助金事業に係る申請書 基本情報を記入する書類。事業者名・代表者名・住所・連絡先等。

② 様式2:経営計画書兼補助事業計画書 申請書の中で最も重要な書類。「自社の経営状況分析」と「補助事業の内容・期待される効果」を記述する。採択を左右するのはこの書類だ。

③ 様式3:補助事業に要する経費・資金調達額を示す書類 補助対象経費の内訳と調達方法を記載する。

④ 様式4:商工会議所の支援確認書 商工会議所または商工会が申請内容を確認したことを証明する書類。申請前に管轄の商工会議所・商工会に相談し、発行してもらう。

⑤ 添付書類

  • 貸借対照表・損益計算書(直近1期分)
  • 個人事業主の場合:確定申告書の写し
  • 開業届の写し(創業間もない場合)

経営計画書の書き方|最重要書類を徹底解説

様式2の「経営計画書兼補助事業計画書」が採択を左右する。ここを丁寧に書けるかどうかがすべてだ。

第1部:経営計画

(1)企業概要

自社の事業内容・歴史・強みを簡潔に記述する。

記載例: 「当店は2015年に創業した、席数18席の小規模イタリアンレストランです。オーナーシェフが北イタリアで3年間修行して習得した本格的な調理技術と、地元農家と直接契約した新鮮な食材を使った料理が特徴です。ランチとディナーの2部制で営業しており、地域の常連客を中心に安定した顧客基盤を持っています。」

(2)顧客ニーズと市場の動向

自社が対象とする顧客がどのようなニーズを持っているか、市場全体の動向を踏まえて記述する。

記載例: 「当店の主要顧客層は30〜50代の女性で、健康意識が高く、食材の産地や調理方法への関心が強い層です。近年、SNSを通じた飲食店情報の収集が一般化しており、来店前にInstagramやGoogleマップで店の情報を調べてから来店する客が増加しています。一方で、当店は現時点でウェブ上の情報発信が不十分であり、潜在顧客へのリーチができていないことが課題です。」

(3)自社や自社の提供する商品・サービスの強み

競合他店との差別化ポイントを具体的に記述する。

記載例: 「当店の主な強みは以下の3点です。第一に、オーナーシェフが北イタリアで習得した本格的な調理技術です。市内の同規模イタリアンとの差別化ポイントになっています。第二に、地元3農家との直接契約による食材調達です。市場流通の食材より鮮度が高く、農家の顔が見える食材であることを顧客に伝えることができます。第三に、少人数制(最大18名)による、きめ細かい接客です。常連客の誕生日・記念日を把握してサービスを提供しており、リピート率が高い点が強みです。」

(4)経営方針・目標と今後のプラン

自店の今後の方向性と、補助事業がその実現にどう貢献するかを記述する。

記載例: 「現在の経営課題は、新規顧客の獲得です。常連客によるリピート来店は安定していますが、新規顧客の来店数が少なく、客数の増加が伸び悩んでいます。今後3年間の目標として、月間来客数を現在の250名から350名に増やすことを設定しています。そのために、①Instagramを活用した情報発信の強化、②ホームページのリニューアルによる予約機能の整備、③地域メディアへの露出増加に取り組みます。これらの施策を通じて、潜在顧客への認知度を高め、新規来客数の増加を目指します。」


第2部:補助事業計画

(1)補助事業の内容

何をするかを具体的に記述する。「何を・誰に・いくらで・いつまでに」が明確であることが重要だ。

記載例(ホームページ制作+チラシ作成の場合):

「本補助事業では、以下の2つの販路開拓施策を実施します。

施策①:ホームページのリニューアル(委託・外注費:30万円) 現在のホームページは2017年に作成したもので、スマートフォン対応がされておらず、オンライン予約機能もありません。スマートフォン対応のレスポンシブデザインへの刷新と、オンライン予約システムの実装を行います。これにより、スマートフォンユーザーへの対応と24時間予約受付を実現します。制作はウェブ制作会社〇〇(見積書添付)に委託します。

施策②:ランチメニューのチラシ制作・配布(広報費:10万円) 店舗周辺(半径1km)のオフィスビル・マンションを対象に、ランチメニューの詳細と期間限定クーポンを掲載したA4チラシを5,000枚制作・配布します。これにより、徒歩・自転車圏内の潜在顧客への認知度向上を目指します。」

(2)補助事業の効果

補助事業を実施した結果、何がどう変わるかを数値で示す。

記載例: 「本補助事業の実施により、以下の効果を見込みます。

ホームページリニューアルにより、現在月平均200PV程度のアクセスが1,000PV以上に増加する見込みです(リニューアル前後の比較は実施6ヶ月後に検証予定)。オンライン予約機能の実装により、電話営業時間外の予約受付が可能になり、月間予約数が現在の月平均40件から60件以上に増加することを目標とします。

チラシ配布については、配布エリア内のオフィス・マンション居住者からの新規来店を月10〜15名増加させることを目標とします。クーポンの使用率を計測することで、チラシの効果検証を行います。

これらの施策により、月間来客数を現在の250名から280名(+12%)に引き上げ、月間売上を現在の130万円から145万円(+11.5%)に増加させることを目標とします。」


商工会議所との連携|採択率を上げる最重要ステップ

小規模事業者持続化補助金の申請では、管轄の商工会議所または商工会への相談が必須だ。

様式4の「支援確認書」を発行してもらうためには、商工会議所・商工会の担当者と面談し、事業計画の内容を確認してもらう必要がある。

しかしこれは「単なる手続き」ではない。商工会議所・商工会の担当者は、事業計画書の書き方についてアドバイスをくれる。「この記述では採択されにくい」「ここをこう変えた方がいい」という具体的な指摘をもらえることも多い。

相談のタイミング

申請書をある程度書いた段階で相談に行くと、より具体的なアドバイスがもらえる。白紙の状態で行っても相談には応じてもらえるが、叩き台となる文章があった方が話が進みやすい。

相談のコツ

  • 「何をしたいか」だけでなく「なぜそれをしたいか」「どんな効果を期待しているか」を整理して持参する
  • 見積書をできるだけ早い段階で入手しておく(経費の計画が具体化される)
  • 一度の相談で終わらせようとしない。複数回相談して計画を磨く

申請から採択・入金までのスケジュール

時期 やること
公募開始後すぐ 商工会議所に相談予約・公募要領の確認
公募開始〜3週間 事業計画書の作成・見積書の取得
締め切り2週間前 商工会議所への最終確認・様式4の発行依頼
締め切り 電子申請システムから申請
申請後1〜3ヶ月 採択・不採択の通知
採択通知後 交付申請→交付決定
交付決定後 補助事業の実施・経費の支払い
補助事業完了後 実績報告の提出
実績報告承認後 補助金の受け取り(入金)

採択通知から実際の入金まで、半年〜1年かかるケースもある。資金繰りに余裕を持った計画が必要だ。


不採択になった場合の対処法

採択率は公募の回によって異なるが、不採択になることもある。

不採択の主な原因

  • 事業計画の具体性が不足している
  • 補助対象経費と事業計画の整合性が取れていない
  • 「販路開拓」の観点が弱く、単なる設備投資になっている
  • 数値目標が示されていない・根拠が不明確

不採択後の対応

不採択の場合でも、次の公募回に再申請することができる。不採択通知には審査結果のフィードバックが含まれることがある。内容を確認し、計画を改善した上で再申請する。

複数回申請して採択された事業者は多い。一度の不採択で諦めないことが重要だ。


採択後の注意事項

採択されて補助金を受け取るまでには、守るべきルールがいくつかある。

① 交付決定前に経費を支払わない

IT導入補助金と同様、交付決定前の支払いは補助対象外になる。必ず「採択→交付申請→交付決定→経費の支払い」の順序を守る。

② 計画通りに事業を実施する

申請書に記載した内容と大きく異なる形での実施は認められない。変更が必要な場合は事前に事務局へ変更申請を行う。

③ 実績報告を期限内に提出する

補助事業完了後、定められた期限内に実績報告を提出する。実績報告が承認されて初めて補助金が振り込まれる。

④ 事業効果の報告

採択後一定期間、事業の効果(売上・客数の変化等)についての報告が求められる場合がある。


まとめ|小規模事業者持続化補助金は飲食店の強い味方

小規模事業者持続化補助金のポイントをまとめる。

この補助金が飲食店に向いている理由

  • 従業員5名以下の小規模店が対象で、多くの飲食店が該当する
  • ホームページ・チラシ・看板・新メニュー開発など、飲食店が実際に必要とする経費が対象になる
  • 商工会議所・商工会の無料サポートが受けられる
  • 採択率が比較的高く、初申請でも採択されやすい

申請成功のための3つの鉄則

  1. 早めに商工会議所に相談する(締め切り直前では間に合わないことがある)
  2. 経営計画書に具体的な数字と根拠を書く(抽象的な記述は採択されにくい)
  3. 交付決定前に経費を支払わない(順序を間違えると補助金を受け取れない)

補助金は「知っている人だけが使える制度」だ。このページを読んだことを、行動のきっかけにしてほしい。まず今日、管轄の商工会議所のウェブサイトを調べて、相談窓口の電話番号を確認することから始めよう。


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執筆者プロフィール

この記事を書いた人

飲食店のDX・補助金支援を専門に全国の飲食店の経営改善をサポート

調理師免許保有。調理師・給食会社勤務にて10年以上、調理・現場衛生管理・スタッフマネジメントを担当。給食会社の社内SEとして3年間、HACCP記録のデジタル化・POSシステム・勤怠管理のIT化を推進。保健所の立入検査への対応、スタッフへのHACCP教育を現場で積み重ねてきた経験をもとに、飲食店・給食施設向けの実務直結の情報を発信しています。
※本記事の情報は2026年3月時点のものです。法令・制度の改正により内容が変わる場合があります。最新情報は厚生労働省のウェブサイトでご確認ください。